斎王紹介その2

歴史の中にさまざまなロマンを紡いだ斎王
悲しくも美しい斎王の物語をご紹介します

斎王の人数、名前の表記、年数等は史料によりさまざまな説があります。
ここでは『斎王物語』(中野イツ著 明和町・明和町教育委員会)の一覧表を元にしています。

万葉集に弟への想いを詠んだ名歌を残した斎王

白色と黄色の小さな花を頭に乗せた大来皇女のイメージイラスト

飛鳥時代の斎王 大来皇女(おおくのひめみこ)

 天武天皇の皇女で鸕野皇后(後の持統天皇)の姪にあたります。(従妹でもある)。壬申の乱(じんしんのらん)の時、天武天皇が伊勢神宮に勝利を祈願して叶えられたため、14歳で天照大神(あまてらすおおみかみ)の御杖代(みつえしろ)として遣わされました。この頃から斎王制度が整えられ、記録も残されていることから制度上最初の斎王とされています。13年間にわたって大神に仕え、任期の最後に謀叛の罪で弟・大津皇子(おおつのみこ)が処刑されるという悲劇に遭遇しました。死の直前に斎宮を訪れた弟を見送った歌や、弟の死の哀しみを詠んだ歌は万葉集の中でも名歌として知られ、万葉詩人としてもその名は後世に伝えられています。

5年間の潔斎の後に伊勢に赴いた斎王

周りにピンク色の花が散りばめられている泉内親王のイメージイラスト

 飛鳥時代の斎王 泉内親王(いずみないしんのう)

天智天皇の第9皇女で、大津皇子に謀反の意志があると密告したことで知られる川嶋皇子の同母妹にあたります。

 年齢は不明ですが、兄の川嶋皇子の生年と、天智天皇の没年から逆算すると天智7〜9年生まれで、卜定時には33・34歳、退下時には38〜39歳であったと思われます。
5年という長い潔斎ののちに伊勢に赴きましたが、わずか半年で退下。その後の消息は定かではなく、天平6年(734年)に、おそらくは未婚のまま、65・66歳で死去しました。
泉内親王が斎王に選ばれたのは、大宝律令が施行された年です。伊勢に赴くまでの5年間は、伊勢の斎宮が次第に形を整えていく準備期間でもあったと思われます。

波乱の人生を送った斎王

薄い黄色の花の傍に立っている円方女王のイメージイラスト

飛鳥時代の斎王 円方女王(まどかたじょおう)

 長屋王と藤原長娥子の娘で、元明女帝の時代に斎王を勤めましたが、ほんの数年で退下しました。

 藤原不比等の娘・安宿姫(光明子)の立后に反対していた長屋王が謀反をたくらんだとして密告され、追いつめられて自殺した「長屋王の変(729年)」の際には父親と異母兄弟を、その後の「橘奈良麻呂の変(757年)」の際には同母兄弟を失うなど、波乱の人生を送りました。

 これは藤原氏の血を引く天皇の誕生をもくろむ藤原氏の戦略に巻き込まれたためと思われます。しかし、圓方女王は、兄弟の死を乗り越え、陰謀をくぐり抜け、孝謙女帝に近しい位置で、宮廷で重要な地位を占め、70歳ほどの長寿を保ち亡くなりました。
圓方女王を斎王としているのは平安時代の『一代要紀』のみ。『斎宮記』をはじめ、斎王の歴代に入れない文献も多く見られます。ここでは、『斎王物語』(中野イツ著 明和町・明和町教育委員会)の一覧表をもとに、斎王の歴代に加えています。

時の政界に翻弄された悲劇の斎王

ピンク色の花の傍に立つ井上内親王のイメージイラスト

奈良時代の斎王 井上内親王(いのうえないしんのう)

 聖武天皇の第一皇女として生まれ、23年間もの長い間、天照大神にお仕えしました。斎王を退いたのち、光仁天皇の妃となり、皇太子を生みましたが、天皇呪詛の罪をきせられ、皇子とともに幽閉ののち同じ日に死亡するという悲劇的な最期をとげました。

 その死は自殺であるとも毒殺であるとも言われ、第一皇女でありながら斎王に選ばれたのも、光仁天皇に虐げられ、罪をきせられたのも、藤原氏を中心とした政治的謀略に巻き込まれたためではないかとする説があります。

母の死を越えて華麗に生きた斎王

大きなピンク色の花の上に立っている酒人内親王のイメージイラスト

奈良時代の斎王 酒人内親王(さかひとないしんのう)

 光仁天皇の皇女で、母親は、第17代斎王井上内親王です。

 母・井上内親王と弟・他戸皇子が天皇呪詛の疑いでとともに身分を剥奪された772年に、19歳で斎王に卜定され、773年に母と弟は幽閉。774年に伊勢へと群行。群行の翌年、775年に母・弟が同日に死亡し、退下…と、短い斎王在任中は数奇な運命をたどりました。退下後は、山部親王(後の桓武天皇)の妃となり、後に第21代斎王に選ばれる朝原内親王を生みます。

 『日本後紀』に大変美しくたおやかな人であったと記され、76歳で亡くなるまで、たびたび東大寺で万燈会を催すなど、華やかな人生を送ったということです。

その他斎王

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